さて、次はアマチュア選手権と同時開催されたレディース・ジュニア(キッズ)クラスの模様をお伝えしましょう。
まずはレディースクラス。
5年連続チャンピオンの飯野沙耶香が欠場となり、王者不在となっての試合となったが、ここ数年の女子のスケートレベルの向上は目を見張るものがあり、今回の試合も充分な盛り上がりを見せた。
伊佐風椰・一里塚綾子・加藤裕理・野口舞子・渡辺あゆみ・小林衣舞、それぞれ思い思いに自由なスケートを披露し、結果は今一歩であったがとても楽しんでいたように感じた。
細かい事を付け加えるならば、全体的に乗っている時間よりも、デッキを追いかけて走り回っている時間の方が多いように感じたので、次回はトリックの難易度を狙うよりも、ルーティンの工夫をしてラインを繋ぎ、1分間滑り続けてみるのも作戦としては有効のような気がする。
3位、庄司七海(セキノレーシング)
練習を見る限り、基本的な動作はしっかりとできていて、一通りのセクションもきっちり使えているのだが、本番になると随分と緊張してしまっていたようだ。
リラックスして試合に臨むことができれば、もっといい結果がだせるはず。
とにかく場馴れするしかない、結果にこだわらず、どんどんいろんな大会やイベントに参加しよう。
2位、伊佐風子(ムラサキ那覇)
ムラサキ那覇からのエントリーとあるが、神奈川在中で、プロスケーターの才哲治を師と仰ぐ、燻し銀のガールズスケーターだ。
滑りの内容も師と同様、変化に富んだ多彩なトリックを混ぜ込んだラインが素晴らしかったのだが、難易度に於いて一位の中野若葉に軍配があがったようだ。
狙いどころはとても良いので、これからものびのびとスケートを楽しんでもらいたい。
1位、中野若葉(TRICKSTAR)
群馬・TRICKSTERからのエントリー。
彼女の場合、「女子」という括りではなく、単純にスケートボーダーとして「上手い」評した方が適切と言える程、全体的な滑りの質が高く、筆者が過去に出会ってきた女子スケーターの中で総合力は間違いなくトップ。
ストリートトリックに断トツのスキルを発揮する飯野沙耶香との直接対決が見られなかったのが残念だが、地元を同じくする2人はおそらく互いを意識した関係で良い刺激を受け合っていることだろう。
いつも長い帽子の鍔で隠れてしまっているのだが、ハードな滑りとは裏腹な優しげな表情がとても印象的。
続いてジュニア(キッズ)クラス。
このクラスは小学生以下が出場資格を有し、6年生以下が混同した順番での出走となるのだが、4~5年生がジュニア評価としてそのままの順位、3年生以下のキッズクラスはジュニア対象者を省いた繰り上数値がキッズとしての順位となる。
子供だからといって侮ってはいけない。
このクラスには各地区のアマチュアランキング選手がゴロゴロいる。
出場するにあたって年齢以外の審査はないのだが、事実上、ジュニアの日本一決定戦といっても差し支えないだろう。
エントリーには各県から腕に自信のある選手が揃い、皆日頃の練習の成果を存分に発揮していた。
思えば、現在プロクラスで活躍する瀬尻凌(ムラサキスポーツ)・杉本瑛生(セキノレーシング)らも数年前はこのクラスで戦っていたものだ。
子供のスケートレベルの進歩の速さは凄まじい、去年見た子が上手くなっているのなら納得だが、数ヶ月前に見た子が格段にレベルアップしているなんていうのが当たり前にある。
このクラスはそういった意味で、非常に興味深い趣が随所にある。
ただし、全体的な印象としては、セクションの使い方・トリックがワンパターン化しているようで、個性の光るライダーは少なかったように見えた。
そんな中、「自分らしさ」を強調し、順位とは別に「いい滑り」として記憶に残ったのが、井狩太海・佐川涼・杉原貫太・平田思栄・伊佐風子だった。
キッズ3位・傳田郁(カスタム)
ストリートからバートまでこなすオールラウンダー、柔軟なバネとバートで培った空中バランス力で、エアーの完成度は小学生の中ではトップクラス。
しかし、年々ジュニアのレベルは上がってきており、身体能力や勢いだけで勝ち残るのは困難となっていくだろう。
是非、相手の滑りを見る観察力や、作戦を考えるスキルも身につけてもらいたい。
キッズ2位・白井空良(ムラサキ本厚木)
アールトリックを得意とする2年生。
その華奢な体からは想像もつかない程、ビッグセクションで大技を次々とメイク、ミスさえ無ければ優勝か!?と思わせるほどにいい動きが目立った。
こちらはスイッチマスター・立本和樹の弟子、密かに練習しているスイッチ系のトリックを披露する日も近そうだ。
小学生クラスの試合ではほぼ皆無のスイッチトリック、身につければとても大きなアドバンテージとなるだろう。
キッズ1位・岸海(ムラサキ八王子)
傳田郁・白井空良がRトリックを中心にポイントをゲットしてきたのに対し、岸海はおよそ小学生が試合で使うにはリスクの高いフリップ&リップトリックを高確率でメイクしポイントをゲット、2位とは大差で堂々優勝だ。
総合でもジュニア1位に続く2位となり、ポイント制の試合ルールではもはや敵ナシといった感がある。
ジュニア3位・小林紗輝(ダブルフェイス)
こちらもアマで大活躍した有馬昴希と同じ、ダブルフェイスからのエントリー。
目立たない部分ではあるが、プッシュやパンピング,ターンといった基本動作がしっかりとできていて、加速調整がとても上手い選手、安定感が出てくるので当然メイク率も高い。
今回のジュニア全体では最も綺麗な滑りの選手だったのではないだろうか。
個人的にとても好きなタイプのライダーだ。
こういったタイプのライダーは、体の成長に伴い高さもスピードもどんどん伸びてくるので、これからますます楽しみ。
ジュニア2位・岸海(ムラサキ八王子)
今年度は関東圏内で佐川海斗と常に1位・2位を争ってきたが、この全国区の舞台でもこの2人の対決が見どころとなった。
ポイント差を見て頂ければ解ると思うが、この2人は他の小学生とはもはや別格である。
もういっそのこと、ジュニアクラスとは別枠で「佐川・岸ガチンコクラス」でも用意して、そちらで対決してもらいたい。
そうでもしないと他の選手が可哀そうだ。
ジュニア1位・佐川海斗(50-50)
アマで優勝なのだから、当然と言えば当然である。
過去のスーパー小学生では瀬尻凌や杉本瑛生が記憶に新しいが、佐川海斗のスケーティングのそれに比肩する素晴らしい滑りだ。
現在、上記の2人がプロクラスの第一線で活躍していることを窺えば、彼もまたそういった才能を秘めたライダーであることは間違いないだろう。
本文では未紹介だが素晴らしい滑りの雰囲気を写真だけでも掲載。
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