少数精鋭によるハイレベルコンテスト




会場となった東静岡アート&スポーツヒロバ

七夕の7月7日にAJSAプロツアーの第3戦、H.L.N.A CUPが東静岡のアート&スポーツヒロバにて開催された。今年は例年6月に開催されていたASIAN OPENが急遽延期となったため、7月に前倒ししての開催となった。



今回のジャッジ陣。左から冨田、フィルマーの丸山を挟んで塩谷、秋山、山西、中坂の5名



MCは予選がbanbi、決勝が本間。タイムキーパーなどのサポート役が横山、救護担当の亀山。



会場にはケガで戦列を離れている池田大亮の姿も。今回は不出場ながらも完全復活までもう少し。

例年東静岡で開催されるH.L.N.A Cupの特徴として、少数精鋭によるガチンコ対決が見れると言うことが挙げられる。今回もエントリー数は19名と、お祭りやイベント的な要素が強かった初戦の日本オープンや第2戦の広島FISEなどと比べると少ないが、その分純度の高いスケートボードコンテストとなっている。エントリーライダーもコンテストを主戦場に世界を目指しているライダーが多く、皆が勝ちを掴み取りに行くので、全体の平均ライディングレベルで言ったら、1シーズンの中で最も高いと言っても過言ではない。



最近は決勝進出の常連だった渡辺雄斗も今回はミスが響き14位で予選敗退



カーブボックスでのスライドトリックの安定感はピカイチだった寺井健人は13位で惜しくも決勝進出ならず

そのため19人中12人が決勝進出と確率だけで言ったら半分以上ではあるが、少しでも気をぬくと予選落ちも十分にあり得る。その証拠に、ここ数年は決勝進出の常連だった渡辺雄斗は14位で予選敗退となってしまった。これにはコンディション不良なども影響していたのかもしれないが、それだけ最近のコンテストレベルが高いということの裏返しでもある。



コンテストにはコンディション担当も常駐。電気の刺激に思わず悶絶



予選終了後にはこうしてライダー同士で決勝に向けて話し合う姿も




続いての決勝は、近年のコンテストレベルの高さを嫌でも確認させられてしまうほどの戦いとなった。その証拠になんと上位10名は全員が200点以上。たとえノーミスでも繰り出すトリックの数や難易度によってはトップ5圏外ということも十分に考えられる。実際に上位陣は皆がノーミスであり、いかにルーティーンの中に自分越えのトリックを織り込んでメイクできるかが勝敗を決するポイントとなった。



12位はルーキープロの飯田葉澄。今回もワンフットトリックのレパートリーは健在。ワンフットオーリー F/Sリップスライド



関西エリアからエントリーの浅井艶照は11位。手堅くまとめたが、上位進出にはさらなるスケールアップが求められる



10位にはエントリー最年少ライダーのひとりである池田大暉。ステアでのトレフリップ。



9位は地元勢から澤島裕貴。F/Sブラントスライドチランスファーからクイックにフリップでバンクへイン



8位に入ったのは佐々木来夢。スタイルの入ったハーフキャブB/Sスミスグラインド



7位は昨年の全日本アマのチャンプ、梅尾周生。彼にとっては朝飯前の繋ぎトリック、タックニー



6位は佐川涼。ほんの少しのミスでトップ5を逃す結果に。F/Sノーズブラントスライド。


いよいよここから先がトップ5。もちろん全員がノーミスのライディングを披露。6位とは20点以上の差をつけており、5位でも248ポイントと言う高スコアをたたき出している。では5位から順にライディングを振り返っていこう。




5位に入ったのは今回の最年少ライダーの一人、渡辺星那。今回は予選1本目の初っ端にこのヒールフリップ F/Sリップスライドを披露。そこで頭を打つスラムに見舞われてリタイアするも、2本目で見事にリカバリー。そして決勝1本目ではノーミスのライディングを披露。強靭な精神力を見せつけ、確かな成長を皆に見せてくれた。



4位は今年STREET LEAGUEやDEW TOURに参戦し、メインスポンサーがelementにスイッチした青木勇貴斗。ここのところ上り調子で白井空良や池田大亮が不参加の今回は優勝候補と目されていたが最終的には4位に。彼からすればこのトレフリップ F/Sリップスライドは、もはやメイクして当たり前。ノーミスの滑りを披露はしていたが、彼の滑りを見慣れている人からすれば、良くも悪くも”いつものトリック”だけで終わってしまったという印象。安定感はピカイチなだけに、彼の現状とスキルを考えると物足りなさが残る内容となってしまった。



3位には小さな巨人と言われていた頃が懐かしいくらいに成長した池慧野巨。すっかり大人の体格となった彼の滑りは以前にも増して軽さが出てきており、今回の出場ライダーの中ではすでにベテランの風格を漂わせている。トリックレパートリーも豊富で、このスイッチB/Sスミスグラインドも数あるトリックの引き出しのひとつ。どんなライディングをするのか読めないという意味では間違いなくNo.1。3位と表彰台に上がってもなお、もっとできるだろうと思わせてしまうところが彼のすごいところ。



2位には青木勇貴斗と同じくここ最近成長著しい山下京之助。その証拠に今年の第1戦の全日本選手権ではベストトリックのみでのメイクだったトレダブルフリップを、今回はランの中で披露。今までの彼には見られなかった確かな成長と上積みを見せてくれたことが2位に食い込んだ大きな要因と言える。とはいえ、優勝できなかったの要因を運で片付けることはできない。細かな繋ぎののトリックがシンプルだっただけに、そこの難易度を上げていれば優勝も十分にありえただろう。


B/Sノーズブラントスライド




今回優勝を飾ったのは青木勇貴斗と並ぶ地元の雄、根附海龍。決勝では予選で披露していなかったB/Sノーズブラントスライドを2本ともメイク。さらにその後は昨年の決勝用のキラートリックだったヒールフリップB/Sリップスライドも当然のようにメイク。これだけでも今まで以上の上積みを見せてくれていたが、今回はバンクtoバンクでもノーリーインワードヒールフリップのリバートやノーリーB/S360のヒールフリップなど、繋ぎの回しトリックでも一捻り入れた高難度なトリックを披露。ルーティーン全てに手抜きが一切ない完璧なランを披露したことが念願の初優勝に繋がった。



念願の初優勝の瞬間



今回の上位入賞者



AJSAおなじみの優勝者インタビュー




史上稀に見る高スコアでの戦いとなった今回のH.L.N.A CUP。池田大亮や白井空良という全日本選手権のトップ2が不在ながらもここまでのスコアが出るということ自体が、近年の日本のスケートボードのレベルの高さを物語っている。下からの追い上げは凄まじいの一言。次回はまだ正式な会場は未定ではあるが、9月のASIAN OPENの予定だ。次の戦いはどのような展開になるのだろうか。一夏を超えてまたひとつ成長した姿を見るのが、今から楽しみでならない。


Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net