2019 JAPAN OPEN STREET CONTEST MENS

オリンピックをめぐる国内最高峰の戦いがスタート



総勢47名がエントリーした男子

前日の23日に開催された女子に続き翌24日には男子も開催された。
ルールは女子と同じく予選は45秒のランを2本行い、良い方の点数を採用し上位8名が決勝に進出。
決勝は同じく2本の45秒ランに加えて5本のベストトリックも行い、上位4本の合計点で勝敗が決まるSLS方式だ。詳細に関しては前日に開催された女子のレポートをご覧いただきたい。

そして今回の総エントリー数は47名。例年シーズンの開幕戦には、前年の全日本アマでプロ資格をゲットしたルーキープロも参戦してくるので、経験豊富なプロ達に加わったフレッシュな面々がどこまで対抗できるかといったところも魅力のひとつだ。今年も例に漏れず、梅尾周生や山附明夢、鎧碧斗と言った昨年の表彰台メンバーはもちろん、晴れて4月より中学生となる池田大輝や三谷小虎と言った未来を担う新世代も顔を揃えた。



彼の参戦には大きな注目が集まった。池田大亮。


その中でも今回注目を集めたのが池田大亮の参戦だ。彼に関して言うのであれば、1月にリオで開催されたSLSでセミファイナル進出を果たしており、2019年度のSLSプロツアー参加資格を有しているため、このコンテストに出る意義は他のライダーよりも薄いと言って差し支えない。しかも国内では確実に追われる立場であり、優勝はノルマと言っても過言ではないだろう。ワールドワイドなコンテストと比べて違ったプレッシャーがかかるのにも関わらず出場したところには、彼のコンテストに対する強い想いが伝わってくる。今回に関して言えばSLSと同じルールであるため、今後に向けて試合勘を養うという意味合いが強かったのではないだろうか。それに彼が出場するかしないのかでメディアの見方も大きく変わる。もはやそれだけの存在になっているのが彼の現在地だ。



当日は非常に多くのメディアが駆け付けた



歴戦のプロ達が貫禄を見せつけた予選



貫禄の1位通過。池田大亮のスイッチビッグスピンヒール

そうした状況下で行われた予選ではあったが、終わってみればルーキープロたちを退け、昨年のプロサーキットのトップランカーたちが決勝へ駒を進めるという概ね順当な結果となった。その中でも池田大亮は貫禄のトップ通過。決してトリック数を多く繰り出すタイプではないが、落ち着いて確実に高難度なトリックを仕留めていく姿には、すでに風格が漂っているようにも感じられる。そして2位通過の池慧野巨、3位通過の白井空良に関しても予選は通過して当たり前と言わんばかりの圧巻のライディングだったことも付け加えておきたい。





ハードフリップ バックサイド50-50グラインド

予選では8位と同点数ながらも、国際ルールの取り決めにより惜しくも決勝進出を逃した根岸空。そのルールとは同得点で並んだ場合、5人のジャッジによる合計得点が高い方が勝ち上がるというもの。そこで8位だった末松蓮にわずか5ポイント及ばず、ルールに泣かされる結果となってしまった。





ハードフリップ フロントサイドボードスライド

続く10位は2017年の年間チャンピオン、佐川涼となった。ご覧のような難易度S級のスーパートリックをメイクして見せたが、全体的に高難度なトリックを狙ったが故、全てのトリックを抑えることができず、無念の予選敗退となった。





オーリーレイトバリアルフリップ

続いての11位は今年のルーキープロ、池田大輝。予選敗退ながらも数多く参戦したルーキープロ達の中では最上位となった。池田大亮を実兄に持つ業界のサラブレッドは、体格に関してもまだまだ成長の余地を残す。数年後は日本のトップランカーになっていてもおかしくない存在で、今回も着実に成長した姿を披露してくれた。





バックサイドクルックドグラインド

続く12位には星野大喜が入った。彼に関してはスタイルという意味では決勝進出者に引けを取らない印象的なライディングを披露。レールではなく横の柵にグラインドしていたのは彼ただ一人。レールより少し高いだけなのになぜ皆やらないんだろうと思ったとは本人の談だが、その発想力やひらめきが彼の魅力と言えるだろう。





オーリー

そして予選敗退者の中で最後に挙げたいのが小鈴大和。奥の発射台から猛スピードでアプローチして披露したこのぶっ飛びオーリーは、インパクトという意味では満点。勝ちにいくよりも、周囲を盛り上げることを意識していたようにも思える彼のような存在は、コンテストを一つのイベントとしてとらえると重要なファクターなのだろう。会場内には彼の滑りをもっと見てみたいと思った人も多いのではないだろうか。






池田大亮のしたたかさが際立った決勝


続いての決勝。ここからは8位から順に振り返っていきたい。




インポッシブル



バックサイド270ボードスライド

決勝8位は予選5位から3ランクダウンの渡辺雄斗。彼はここ数年決勝の常連になってはいるが、まだ優勝には手が届いていない。今回もベストトリックの1本目までは即なくメイクを重ねていたが、そこから4本連続でミス。本人も不完全燃焼だったことだろう。





バックサイドオーバークルックドグラインド



バックサイドヒールフリップ

続く7位はヒール系トリックのスペシャリスト、根附海龍。ランの2本目でミスが目立ち、逆転を狙ったバンクからの全越えビッグスピンフリップは惜しくもメイクならず。それでも出場すれば毎回決勝に勝ち上がる安定感はさすがの一言。





フロントサイドブラントスライド



バックサイドノーズブラントスライド

6位にはAJSAのプロ戦で過去最高の順位となった末松蓮。これらの安定感あるレールでのブラントスライドに留まらず、バンクからの全越えトレフリップテールグラブや、飛び上がりバンクをステアに見立てて披露したベニハナなど、新旧織り交ぜたトリックチョイスでオーディエンスを沸かせていた。





フェイキーオーリースイッチバックサイドクルックドグラインド



ノーリーキャバレリアルスイッチフロントサイドボードスライド

そして予選2位通過だった池慧野巨は、決勝では無念の5位。ここ5年ほどは堀米雄斗、池田大亮とともに新世代の3枚看板としてシーンを盛り上げてきた彼。今回もメイン、フェイキー、スイッチ、ノーリーと分け隔てなく様々なトリックを使い分けており、相変わらずの潜在能力の高さを見せつけてくれた。おそらくトリックレパートリーでは出場ライダーの中でNo.1だろう。周囲からの期待値も高いだけに今回の結果は不本意だったに違いない。天才肌ではあるがムラっ気があり不安定。そこさえ改善されればあっという間に堀米雄斗や池田大亮に追いついてもなんら不思議ではない。





ノーリービッグスピンヒールフリップ



トレフリップ50-50グラインド

4位には昨年のAJSAプロツアー年間ランキング2位の青木勇貴斗。ここ2年ほどで体格とともにスキルも急成長した彼も、最近の決勝進出ライダー常連の一人。予選ではバンク to 下りレールでトレフリップからの50-50グラインドというミラクルトリックもメイク。ただし念願の初優勝には、そのようなキラートリックを安定して出せるようになることが必要になってくるだろう。ルールがSLS方式となった状況下では、その比重はさらに増している。





スイッチフロントサイド180 フロントサイドスミスグラインド



トレダブルフリップ

3位には急激な成長を見せる山下京之助が輝いた。以前は小柄な体格ゆえダイナミックさに欠けるところがあったが、新シーズンを迎えて着実に背も伸びてきて、大人なライディングに成長しているのを実感できた。ご覧のバーレークラインド(S/S F/S180 スミスグラインドのこと。昔ドニー・バーレーというライダーのシグネチャートリックだったことから、今でもそう呼ばれることが多い)は朝飯前。ベストトリックで披露したダブルトレフリップは今大会のベストスコアとなった。





フロントビッグスピンテールスライド



オーリーセックスチェンジ トランスファー

2位には昨年のDAMN AM JAPANの覇者、白井空良が輝いた。彼に関してはF/S180からのS/S 50-50グラインドやクルックドグラインドなどに加え、セックスチェンジなどオリジナリティあるトリックもメイク。優勝してもおかしくないレベルではあったがあと一歩届かず。あと彼に必要なのは海外での結果か。国内での優勝経験は豊富ではあるが、海外ではケガに泣かされたりと持てる実力を発揮し切れていない印象。そこを乗り越えることでもう一皮むけ、さらなる貫禄がついてくれば自ずとさらなる結果が付いてくるはずだ。





バックサイド270ボードスライド270アウト



フロントサイドキックフリップ



バックサイド270キックフリップボードスライド270アウト

そして終わってみてば優勝は予選決勝ともに1位となった池田大亮。実績から言えば当然の優勝と言えるかもしれないが、実力以上に”強さ”が際立った滑りだった。
45秒ランのルーティーンではミスをしても決して慌てずに着実に他のトリックを仕留め、ベストトリックでは自身のキラートリック、B/S270キックフリップボードスライド270アウトをミスしても2本目できっちりと仕留める。
そしてベストトリックの4本目では、自身のスコアを確認しながらバンク to 下りレールでB/S270ボードスライドの270アウトをワンメイクして暫定トップに躍り出る。ラストは優勝が決まっている状況ながら飛び上がりバンクをステアに見立てたセクションでF/Sキックフリップを完璧にメイクしてスコアを上乗せ。この一連の流れからは、その場の状況に応じて臨機応変に対応し、トリックを選びながら慎重に戦うしたたかさを垣間見ることができた。


今の国内シーンは純粋な実力だけで言うなら、彼と遜色ないライダーは多いだろう。ただしスキルだけでは結果は残せない。コンテストに対する準備や取り組み、メンタルコントロールや状況を読む力、その全てが揃って初めて安定した結果が付いてくるのではないだろうか。そう思わせてくれる貫禄の滑りを、彼は披露してくれた。




健闘をたたえ合う池田大亮と白井空良




今回入賞したトップ5の面々








今大会を制した池田大亮と藤澤虹々可




囲み取材を受ける池田大亮。もうおなじみの光景だ。






Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net